人がこの世に誕生するということ。それは約十ヶ月の間、母体となってつながっていたへその緒から切り離され、自ら呼吸を始めるということ。 この瞬間に私たちは、呼吸により大きな世界と常につながることで、生かされる存在であるということを知る。 生きていく事の苦しみは非常に多い。日々のくらしからくる不安、後悔、焦り、迷い、欲など、自分の心をコントロールすることのなんと難しいことか。 そんな時、自分の力だけではどうにもならないことを知る。その心のよりどころとなるのが南無阿弥陀仏。両手を合わせ、静かに呼吸し念仏をとなえる。 すると、生まれた瞬間に知らされた大きな世界とつながって生かされていることを思い出す。 思いあがりを捨て、阿弥陀仏におすがりし、信心を得たからといって、この世において苦しみが全く無くなることはないけれども、阿弥陀仏をとなえることで、天の恵みや人の優しさ、めぐり合わせなど、すべてはわたしたちを包み込む何か大きな力のおかげだと思い至れば、どうにもならないと思えた苦しみも、わずかずつでも確実に減って今日という日を過ごす力になる。 苦しみは、日々それなりに巡ってきて、わたしたち凡夫は、すぐに迷いの道に舞い戻ってしまうけれども、念仏をとなえ続ければ、それは心の栄養となり、前を向いて歩いてゆける、喜びの日々が連なることになるのです。
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