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真宗大谷派大垣別院開闡寺は真宗大谷派(東本願寺)を本山とする別院です。

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〒503-0897 岐阜県大垣市伝馬町11番地

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 テレホン法話 2014年  

  放送日 タイトル 法 話
494 2014年5月21日〜 帰るべきところ 第12組林正寺 林 文照
 初夏の訪れとともに、今年もツバメがやってきて、寺の門に巣を掛(か)けています。元気にえさを運び、卵を温めている姿を見るのは良いものです。
 ツバメは、東南アジアや遠くはオーストラリアなどから渡ってくるそうですが、毎年、同じように姿を現すのは当たり前のようであり、よく考えると、不思議なことでもあります。田舎の家々は、昔は玄関にツバメの出入り用の小窓が開けられていました。そして、広い土間の(はり)にはツバメの巣掛け用の板が打ちつけられていたものです。しかし、家が新しくなるとどの家も、「ツバメが巣をかけると汚れるから」ということで、小窓をなくしてしまいました。よその家ばかりではありません。わが寺の庫裏(くり)も同様です。
 数年前、こんな出来事がありました。しばらく家を閉めておられた家ですが、「久しぶりに法要を」とお勤めを頼まれました。遠方から、すでに老齢となった兄弟たちが集まり、いっしょに正信偈(しょうしんげ)を読んだその後のことです。大きく開けた玄関に「ちちちちち」と元気良くツバメが飛び込んできたのです。さわやかな風が旧家に生命を吹き込んだようで、家の中が一気に明るくなりました。「あら、つばめ! この家を覚えていたみたい」と、その場にいるみんなの顔が輝いたのでした。しばらく、ツバメの姿と鳴き声を追いながら、「でも、また家を閉めてしまうから巣はかけないでね」と名残惜しそうに声をかけておられたのが印象的でした。
 きっとつばめは巣をかけた場所を覚えていて、その記憶は代が変わっても受け継がれていくのでしょう。それは、自分たちの生まれ育った家を懐かしく思い、兄弟集まって先祖をしのんでお勤めしようと思い立った、この家の人たちの姿に重なって映ります。
 彼らだけではありません。わたしたちは本来、みな一人ひとり、帰りゆくべきところがあるはずなのです。そこを先輩方は「お浄土(じょうど)」と言い表し、バラバラで一緒になれる世界として見出してこられたのです。
 残念ながら現代は科学的、合理的な考えに支配されています。その一方で、豊かな信仰世界を失いつつあります。ツバメが私たちに教えてくれるものは何でしょうか、よく考えたいものです。


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