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真宗大谷派大垣別院開闡寺は真宗大谷派(東本願寺)を本山とする別院です。

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 テレホン法話 2019年  

  放送日 タイトル 法 話
624 2019年7月1日〜 自身の課題を見つめる 大垣教務所 土室 斉
 私の二つ下の妹は、重度の障がいを抱えて生まれた。しゃべることも、歩くことも、自分でものを食べることもできず、意思疎通(いしそつう)もできない。
 小学生の頃、友人と校内を歩いていた時のこと、車椅子で母親と一緒に登校していた妹と廊下ですれちがった際に「僕の妹だよ」と友人に紹介したら、友人は「そうなんや。かわいそう。」と言った。友人は子どもながらに率直な思いで言ったのだろう。しかし、その言葉に対して私は、激しい違和感を感じたことを覚えている。自分の大切な妹が否定された、そんな感覚だった。しかし、友人の同情に対して強く反論することができなかった。それは、私自身の中に「恥ずかしい。」「妹に障がいなんてなければよかった。」という思いが、まぎれもない事実としてあったからだろう。
 妹が在籍していたクラスでは、意思疎通ができないにも関わらず、妹を中心としたコミュニティーができていた。それは、何もできない妹に対して、クラスメイトがサポートしてくれていたからなのかもしれないが、コミュニケーションはとれないけれどクラスメイトと妹は確かにつながっていたのである。
 それなのに私は、自分が他人からどう見られているのかという自分本位なことばかりを考え、周囲の目ばかりを気にして、妹のすがた、ありのままのいのちから目を(そむ)けて見ようとしていなかったのである。
 親鸞聖人は『尊号真像銘文(そんごうしんぞうめいもん)』という著書の中で、阿弥陀如来(あみだにょらい)のはたらきを「光」に(たと)えて、
  弥陀(みだ)誓願(せいがん)無明長夜(むみょうじょうや)のおおきなるともしびなり。なんぞ智慧(ちえ)のまなこくらしとかなしむな
                                   (『真宗聖典』530頁)
と仰っている。自分の思いに閉じこもり、闇の中に身を置く私たちの姿を、阿弥陀如来は照らしてくれると教えて下さっている。
 障がいを「普通の人とはちがう」という、自分の分限でしか見れなかった私の闇を照らしてくれた妹のいのちは、まさしく阿弥陀如来のはたらき「光」であったと、今感じている。
 そして、これは私ひとりだけの課題ではなく、経済至上主義・成果主義という空気が蔓延(まんえん)している現代社会に身を置く一人ひとりが、同じ課題を抱えているのではないだろうか。そして、その自身の課題を見つめることを機縁(きえん)として、教えに自己を問うていく歩みを、進めていかなくてはならないのではないだろうか。


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