放送日 | タイトル | 法 話 | |
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672 | 2021年7月1日〜 | ごめん、ありがとう | 第14組 存徳寺 柏尾真道 |
私が関わらせていただいている、重い障害をもったある男性のお話をさせていただきます。その男性は重度の知的障害があり、重いてんかん発作を抱えておられます。一日に何度も発作が起きる時があり、社会生活上の生きづらさを抱えておられます。そんな彼と彼をとりまく環境と関わらせていただいて、気づいたことがあります。それは、彼のまわりにはあたたかいつながりが沢山あることです。ご近所には、彼に声をかける人が沢山います。時には、家族のかわりに近所の方が受け入れる体制をつくっている。なぜ、これだけ彼をとりまく環境が温かいのでしょうか。 お母さん、家族の環境ももちろん大きな影響があります。しかし、本質は彼が発信する言葉の力にあります。彼は二つの言葉を、一日に何度も言います。それは「ごめん。ありがとう。」という言葉です。一日の生活のなかで、本当に良く出る言葉。手伝ってくれた人、関わってくれた人にしっかりと、この二つの言葉を相手が恐縮するぐらい伝えているのです。何かをやるたびにごめん、ありがとう。彼と接する人は思わず照れながらも、あたたかくうれしい気持ちになり、自然とより関わりたくなる。 ある時私は、お母さんに「どうしてこの言葉が沢山言えるのか」と率直に尋ねました。するとお母さんは「この子は沢山の人のお世話になって生きていかんならん。だから、この二つの言葉だけは、お世話になった人に伝えられるように教えました。」と言われました。きっかけはもちろんお母さんにありました。しかし、今ではその言葉が自分のものとなり、関わる人が自然と増えて様々なうれしいつながりができ、彼自身が生きるうえでの大きな力になっています。 私たちは、いつの間にか自分の力で生きている気になって、プライドや立場により様々な壁をつくってしまいます。彼と接するとそんな壁をつくっている自分に気づかされます。また、コロナ禍である今、つながる機会が少なくなり、自分の存在意義を失っていく気持ちになる人が多いと言います。孤独感にさいなまれ生きる意味を見失っていく。関係存在である私たち、誰しもがなりえることです。 親鸞聖人は人と生まれたということは、関係性を生きる者として生まれたことであると教えてくださっています。その教えをいただくならば、生まれた意義と生きる喜びは他者との関係性において見いだされます。 身体的に距離を取らなければならない状況にある今だけれど、心はつながっていたいという思いは誰もが求めています。お念仏をとおして、「色んな人にお世話になっているこの私」であったと気づかせていただく。当たり前の言葉だからこそ、いつの間にか身近な人にも言えなくなっている言葉、「ごめん。ありがとう。」を関わる人にしっかりと伝えていく。そして、言葉を伝えることで開けていく世界がそこにあり、私たちが喜んで生きていける歩みにつながっていくのです。 |
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