№ | 放送日 | タイトル | 法 話 |
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692 | 2022年5月16日~ | 自分は善人か悪人か | 大垣教務所 小島達暉 |
私が大学に入学し真宗学を学ぶ前に、自坊の住職である父から「自分は善人か悪人か」と問われたことがあります。その時は、罰せられるような罪を犯したこともないということで、悪人ではなく善人なのではないかと答えた覚えがあります。 その後、ある法要にて父は「普段の生活の中のちょっとした行動や言動は善人のものか悪人のものか」という内容の法話をしました。例えば、何気なく置いたものを相手が蹴って壊してしまった時、二人が「自分は善人」だと思っている場合は「こんな場所にものを置いた相手が悪い」「ものを壊した相手が悪い」と自分を「善」、相手を「悪」として、自分こそが正しいのだと考えてしまいます。皆さんは自分こそが正しいと、自分を「善人」だと思い込んだ行動をしていないでしょうか、という問いかけで法話は終わりました。 今、このお話を聞いている皆さんはどうでしょうか。多くの人も私と同じように、善か悪かでいえば自分のことを「善」だと思われるのではないでしょうか。しかし、父の法話の中でも言われているように、私たちは自分こそが正しいと思って生活していますが、それは「分別心」によるものなのです。一般的にもの分かりが良いことを示す語ですが、仏教においては、「自」と「他」を区別して考えるという意味があります。自分と周りが相対するような考えであり、この分別の奥には自我意識がはたらいて、自分こそが正しいという、自分の思いを決め付けることに繋がるのです。そしてこのように、自身への思いを依りどころとして生きている私たちの姿を写し出し、気づかせてくれるのがお念仏の教えなのです。 このことは、普段の生活だけではなく、昨今の世界情勢に目を向けてみても、この教えは大切な意味があると考えられるのではないでしょうか。自分たちの国のすることは正しい善であり、相手の国は間違った悪だと決めつけた国家間の対立や争いは、毎日のように報道されています。お念仏の教えは、そんな人間の有り様について、問いかけてくださると同時に、その様な私たちをもらさず救わんと、はたらきかけてくださるのでしょう。 |
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